ヤマチャ景観を支える仕組みと課題の探究
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愛知川の源流域にて近世以前より営まれてきた銘茶「政所茶」の産地。渓谷に点在するヤマチャ畑,ススキ原,集落,山林が一体となった景観。
木村真也は,茶園景観の特徴を明らかにするとともに,茶園景観が成り立つ営為を明らかにして,その営為に生じている問題を明らかにした。茶園景観の特徴としては,谷間の集落の内部や外縁部,南面の緩斜面を中心に,小規模な茶園が点在すること,および,茶園と家屋,ススキ原,田畑,スギ林が一体となっていることが明らかとなった。また,このような景観の成り立つ営為としては,当地に順応したヤマチャを長年受け継いでいること,茶樹の更新や整枝に伝統的な技法を用いること,草取りや施肥などきめ細かい手入れを茶園やススキ原に施していること,丁寧な手摘みによる少量生産で付加価値を得ていることが明らかとなった。
しかし,若年層の流出と高齢者の体力的な限界により,茶園および周辺に対するきめ細かい手入れが困難となっている。さらに,獣害による収量の減少や価格の下落により,生産意欲も減退しているため,管理放棄される茶園が今後増えるとともに,株仕立てが減少し,防獣ネットが増え,管理されないススキ原の植生遷移が進み,本来の茶園景観の変容が予想される。
作図:木村真也
これらの知見は,奥永源寺地域振興計画書の作成(2010-2011年)に活かされた。原案は木村真也によって書かれた。政所茶と木地木工の長い歴史を持つ山里の拠点形成シナリオを地元協議会と市長に提案した。統合で使用されなくなった中学校を段階的に変えていくものであった。この案が元となり,道の駅「奥永源寺渓流の里」が開設された。
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more information
木村真也,村上修一(2011):中山間地域における茶園景観に関する研究-滋賀県東近江市奥永源寺地域について:日本都市計画学会学術研究発表会論文集46(3):151-156
木村真也,村上修一(2012)中山間地域における沿道の茶園景観の特徴に関する研究:ランドスケープ研究 75(5):661-666
写真:村上修一