Laboratory of Landscape

村上修一研究室

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都市が森に還る現れとは


写真,図: 宮川絵充

苔は森の始まりであり,街路上の苔は,都市が森に還る現れ。

宮川絵充さんの卒業研究によれば,彦根駅東側の新旧2街区で,そのことが確認されたという。それは私たちの足元で起こっているのだ。しかも,旧街区の方が進んでおり,路上の苔の分布密度は,新街区の6倍だそうだ。ただ,佐和山に近い所,家や塀の陰になりやすい所に分布が偏っているのではと,山麓からの距離や方位との関係を分析したところ,特定の傾向が認められなかったという。一方,表層の凸部,人や車の頻繁な通過のある所,道の掃除をかかさない家の前には分布がみられず,表層の凹部,人や車の通過が少ない所,道の掃除をしない家の前には分布がみられたという。つまり,人間活動の影響に左右されながら,長い時間をかけて着々と分布域を広げている苔の様相が明らかとなった。
  
近年,欧米では,自然生態系の中で都市を見つめ直す潮流が強まっている。その流れを作り出した一人とも言える,ランドスケープ・エコロジーの世界的権威,リチャード・フォアマンは,元々苔の研究者であった。驚くべき偶然だが,宮川さんは直感的に,生態都市デザインの最前線をとらえたと言ってよいだろう。
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宮川絵充,村上修一(2016)都市が森に還る現れとしての蘚苔類の分布について-彦根市内の新旧2街区の街路を対象として-:都市計画報告集15:66-69
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