脱境界
- 大津は琵琶湖に沿って細長い市域を有し,湖,市街地,山の距離が近い。
佐々木美佳さんは,「におの浜」の湖岸緑地に足しげく通い,光,風,水,土,生き物,そして人のふるまいを観察する中で,それらの事象が空間によって制約を受けているのではないかという問題意識を持った。
湖岸の空間は,まるで布生地がばらばらに並んでいるかのようだという。ここまでは公園,ここからは道路,というように所有,管理,機能別に空間を区切るという従来の都市のつくり方に対して,佐々木さんは糸を解して生地どうしをつなぎ合わせるという作法をもとに,湖,湖岸,公園,街路,街区,山を継ぎ目のない一枚の布として再編するという新たなつくり方を提示する。
解した糸のふるまいや操作(解す,解れる,綻ぶ,縺れる,切る,伸びる,結ぶ)を発想の源として,区切られた空間どうしを具体的な「もの」と「こと」でつなぐ設計を示したマトリックス(上の図)は注目に値する。さらに,このマトリックスの各要素を局所的な状況に応じて各部に適用しながら描いた,未来のにおの浜および周辺地区の平面図は実に緻密かつ提唱的である(下の図)。
作成:佐々木美佳
佐々木さんの作品は,本来土地が継ぎ目の無いひとつながりであることを提起する。
作成:佐々木美佳