Laboratory of Landscape

村上修一研究室

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堰の親水的活用の実態


左から朝倉堰,一の井堰,立神堰

79水系255堰の管理者等への聴き取りと現地調査を行い,以下のような知見を得た。

親水空間としての堰体の活用は5例,越流観賞の対象としての活用は1例に過ぎない。このことは,親水空間として8割,越流観賞の対象として9割の堰が物理的に活用可能という既往研究の知見と大きく異なる。



ただし,40例におよぶ見学対象としての活用に親水の可能性が見出された。これらは農業啓発や地域学習を目的として行われるものであり,親水を目的とするものではない。しかし,来訪者が堰に接近し眺望することから,越流観賞の対象としての活用に結びつく可能性を示している。農業啓発や地域学習に加えて越流観賞の要素を見学プログラムにいかに織り交ぜるかが課題と考えられる。さらに,このような形式の活用では来訪者の行動範囲が低水路外に限定されるため,安全管理上の課題が低水路内の活用に比べて少なく,管理者にとっては取組みやすいと考えられる。したがって,現在は未活用の堰についても,越流観賞の要素を含む見学プログラムの導入の可能性がある。

一方,堰体,湛水,浅瀬といった低水路内の活用が,低水路外の活用に比べて少ないことが明らかとなった。その要因として,堰および周囲の低水路内への入込みに対する管理者の安全管理上の意識が考えられる。しかし,低水路内の活用事例では,堰および周囲の整備や安全施設の設置,現場を熟知する者によるガイド,具体的な危険情報の提供,特定の来訪者に限定する運用といったハード,ソフト両面での方策がとられ,来訪者の安全確保と親水的活用の両立がなされている。したがって,現在は未活用の堰についても,先行事例の方策を適用することで,安全確保と活用の両立が可能となると考えられる。
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村上修一(2013)国内の水系における固定堰の親水的活用に関する研究:ランドスケープ研究76(5):553-558
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