研究の背景
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八田堰(仁淀川)
写真は高知県の仁淀川にかかる八田堰である。築造の歴史は350年以上前にさかのぼる。石と木枠の堰体はコンクリートに置き換えられたが,河道を斜めに横断する形態は,洪水の勢いをいなす先人の知恵を今に伝える。堰体の緩やかな傾斜や小さな段差により,堰や周辺の水域では様々な親水活動が繰り広げられている。
堰の多くは,その土地に長年継承され,川と地域との関わりの歴史を投影する重要な景観要素である。しかし近年,利水や治水機能の改善要請から,撤去や可動化が進む。一方,住民投票で可動化に反対の意思表示がなされた後,現堰の取り扱いが棚上げされるといった問題も生じている。今後の河川整備では,利水や治水の視点に加えて,親水性や人の関わり,文化的景観も含む様々な視点から,堰のあり方について可能性を議論する必要がある。